粋な伝統数奇屋
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出来上がった東側の通路
設計当初より課題となっていた東側の通路巾、既設の改修前の状況では敷地の高低差や
樹木の存在そして石垣の不揃い状態の修正前ということもあったので、
現況の寸法を慎重に押さえておき設計図に反映させたものの果たして塀と建物の間隔が通路として
機能しそうかには不安は残っていました。
こういうときは経験的感と塀の施工時の細かな現場対応で決まるものです。
塀の控え壁の位置を調整したり植え込み巾も庭木に造詣の深い建築主奥様のアドバイスを
元に考えたりして決めましたが、
意外と庇の低くて深いデザインが救いの手を差し伸べてくれたようです。
庇が広い印象を与えてくれて、東の庭そのものも心配していた窮屈な感じを無くしてくれました。
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玄関ホール
玄関引き戸を入ってホールの部分には先代から使用されていたという井戸があります。
リフォーム前には玄関外部の入り口脇に石組みで残してありましたが、
玄関内部に入れてオブジェのような存在として生き返らせようということでした、
実用的にも生き返らせてポンプを設置しましたが充分でないにせよ
今でも代々伝わる家の井戸水が汲み上げられます。
先代から引き継ぐものを井戸だけではなく記憶や空間の空気感もということも踏まえて、
井戸だけでなく建築主さんの思い出の浸み込んだケヤキのフローリング材や天井板などの材料も
再使用できる範囲で生かされています。
その基本的考え方が変に派手さの無い大人しいデザインに仕上がったようです。
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玄関脇の飾り床
玄関正面は漆の棚、正面に上がるのではなくて左手が客間への通路になっています。
正面の壁の向こうは居間、壁の上下には欄間と地窓にて通風を確保してあり、
デザインとしても正面が閉鎖的に感じられない役目も負っています。
そして左手には画像のような飾り床が作ってあります、「こちらへどうぞお上がりください」
と誘導するかのように。
位置を変えて外の光が差し込むようになった階段の見える向こうの
格子戸がお座敷の入り口になっています。
ビフォーアフターのアフターだけでは説得力がないですが、
改装前の玄関より広く明るいイメージになっています。
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階段ホールから
階段ホールに入って玄関を振り返ると画像のような絵になります。
左側の壁の向こうが居間で、正面に見える扉はダイニングに繋がる接客用のものになります。
個室用途に使う部屋以外は人の動線が繋がる回遊プランにするという
最近一般的なってきた考え方です。
画像の真ん中に門型で組まれたケヤキの柱梁が既存の玄関の入り口にあった材料を
工場に搬出してプレーナー仕上げの上、大工さんに苦労をお願いして改めて組みなおしました。
新しい玄関の中央でもう一度主役でがんばってください、ということです。
新しいケヤキよりも時間経過を経たケヤキのほうが油ののりが
自然で艶々し過ぎていなくて美しい色を出しています。
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ダイニングキッチンの広さ
東海地方の木造伝統工法には住宅の代表的なプランには「田の字プラン」があります。
2間や2間半の升目にはまる規則性は軸組みを構成する合理性に根ざしていることは
古くより知られており、歴史が作った知恵です。
このU_houseの田の字プランは大黒柱から西側だけになっており、
東の下屋となっている部分は改修前の状態ですでに2階の小屋組みのように丸太で構成されていて、
工夫次第で広い空間が確保できますよ・・・・と語っているようなものでした。
画像はその小屋組みを支える柱の位置をアチコチ配置換えして耐力壁を確保しつつ
出来上がった居間とダイニングキッチンを東からと西からと撮ったものです。
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洗面所前のトップライト
ダイニングキッチンの厨房部分から(画像右手)奥行き方向に洗面所や勝手口への引き戸があり、
その上部、ポッカリ明るい天井部分に電動開閉式で雨を感知して
自動で閉じるトップライトが設置されています。
住宅の一番明るさが欲しいのにプランの制約上暗くなりがちな洗面所前の廊下やキッチンを
昼間の安定した北からの採光を入れてやれる条件がリフォームという制約の多い中に
偶然見つかったという感覚でした。
開閉式にすることによって北からの通風を居間に取り込み、
廊下から玄関への風の流れを作りたいということもありました。
室内の環境をエアコンや換気扇のみに頼るということになりがちな現代の住宅には
壁に限らず屋根にも「穴」をあけること場所をいつも探しています。
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