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これまでに設計してきた住宅や建築の家づくりプロセスを紹介します。
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生きたバリアフリー
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〜師走の雪化粧〜
本堂の雪化粧された様子です。
雪といえば、皆さんは雪の重さをご存知でしょうか?
大垣市では毎年積雪がありますがその年によって積雪量は違いますが比較的少ないですね・・・
建築設計の中には構造計算と呼ばれるものがあり、建物の安全性を確認しなければなりません。
屋根に積もった雪はどう考えるのか?
・・・もちろん雪が積もった状態でも安全であるように計算し確認しなければなりません。
では、簡単に説明しましょう。
雪の重さは一般地域で、1センチ積もると1平方メートル当たり20N(20ニュートン、約2kg)の
重さと決められていて、これに雪の深さを掛け算します。
大垣は条例で積雪量が40センチとなっていますから
・・・40cmx20N(2kg)=800N(約80kg)が1平方メートルに加わる重量となります。
・・・おおよそ畳1枚にがっしりした大人が2人乗った状態と同じですからかなりの重さですよね・・・
しかし、もし多雪地域であれば、20Nを30Nに割り増ししなければならず、
さらに積雪深さが2メートルの地域もありますから
30Nx100cm=3000N(約300kg)1平方メートルあたりですから
・・ひぇ〜、おおよそ畳1枚に大人9人ですよ!!
雪の重さは建物に重大な影響力を与えているんですね。
このような内容をふまえた『構造計算』によって
建物の安全性を確認することも重要な仕事の1つです。
しかし、問題となった構造計算の偽造・不正は何故おこったのか
・・・構造計算をなぜおこなうかの本質を見失ってしまったからでしょうね・・・
建設業者の視点から工事費削減が最重要項目となってしまい、
住人や地域・社会への安心・安全を考えた構造計算ができなかったんですね。
又、まじめにコツコツ仕事をしている同業者をも社会から不信感を抱かせる結果となってしまったことが
大変腹立たしい限りです・・・
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〜和室の飾り紅梁〜
この紅梁は解体した本堂の内陣両脇に使用されていたものを加工して再使用しています。
300年以上も経過しているのにそれにとりつくヒノキ柱よりずっと風格が有り、
見劣りしない価値を感じます。
ちなみに再使用の提案はご住職ですが、さすがお気に入りの紅梁であったことを物語っています。
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〜外壁の施工〜
外壁には金物通気工法のサイディング(窯業系サイディング※30)を使用しています。
写真部分は下部でヨロイ貼りの形状に木目のような模様がついていて最後に仕上げの塗装をします。
金物通気工法とは従来の胴縁と呼ばれる木質の桟に釘で打ち付けるものではなく
金物に引っ掛けるように取り付けていく工法で仕上げ面に釘の頭が露出しません。
後に出てきますが、上部はサイディング(フラットタイプ)を下地として弾性塗剤である
ジョりパッドで割り肌のテクスチャー(仕上の状態)として
下部のヨロイ貼りと一味ちがうものとなります。
※30・・・窯業系サイディング(ようぎょうけいさいでぃんぐ)
セメント質と繊維質を主な原料にして板状に形成したもの。
人体に有害なアスベストを使用していないため現在主流となっている。
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〜天井の野縁組〜
写真は天井の野縁(※33)を組上げたところです。
天井部分は間接照明にて光の演出をしていますがこの写真ではどこがどうなっているかわかりませんね
・・・又、以降で出てくるのでその時説明することにしますが簡単に・・・
中央の平らな部分が光を反射させる部分で
その両サイドの曲線部分に照明を隠蔽することになります。
照明にはその見せ方により名称がちがいます。
コーニス照明、コーブ照明、バランス照明等、部屋の演出の仕方によって使い分けます。
照明一つで部屋がまるで違う雰囲気物になりますし、
器具により拡散させるのか、柔らかくするか、はっきり見せるか・・・とても奥が深いんです。
※33野縁(のぶち)
天井板などを張るための下地の骨組となる細長い角材で吊木にとりつけますが、
角材でなく板材を用いた野縁を板野縁と呼ぶ。
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〜上部外壁・塗り〜
外壁の上部にはジョりパットと呼ばれる製品を塗り付ける仕上げとしています。
下地は窯業系のサイディングでつなぎ目には
パテと特殊な繊維を貼り分からないようにしています。
コテ(※32)といわれる道具を使って押し付けるように塗りますが、
その塗りつける動きや使い方でいろいろな模様を付けることができます。
ここは職人さんの腕がものをいいますが下地の処理も大変重要でたまにジョイントの処理が
不十分で仕上げた後にもジョイントのラインが浮き上がって見えてくることがあります。
又、建物は風や地震である程度動くためにつなぎ目に力がかかるとヒビ割れや
『はがれ』の原因になるので注意が必要です。
※32・・・コテ(こて)
モルタルや珪藻土を塗りつけたり表面を平らにする道具でさまざまな形状があるが
基本的にはアイロンのような形で鉄・樹脂・木と種類によって使い分ける。
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〜銅製の樋〜
本堂の向拝部分に取り付けられた樋も屋根の銅板と同じ銅製としています。
銅は主に現在出回っているガルバリウム鋼鈑(※31)等の金属とは化学的性質がちがいます。
「違う」を具体的にいいますと銅はイオン化傾向の低い金属 に属しています。
一般に使われているガルバリウム鋼鈑はイオン化傾向の高い金属となるため
性質の異なる金属が接触すると電食といわれる腐食が起こりますから
銅を扱う場合は注意が必要なんです。
※31・・・ガルバリウム鋼鈑(がるばりうむこうはん)
耐食性、耐熱性、加工性に優れた、アルミニウムと亜鉛の合金メッキ鋼板。外装材として使用される。
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〜方形屋根の隅棟〜
隅棟部を下から眺めた所です下の方には屋根の鼻部分が写っています。
この鼻と言われる部分は一般の住宅では鼻隠し(はなかくし)を取付けます。
住宅等では桧やヒバを見せたり最近ではサイディングと同じ素材で作られた物も出回っています。
明秀寺では全体のバランスと統一性を考え銅板にでお化粧をしています。
屋根の曲線を出し軒先を1800mmだしていますから骨組みにもいろいろな工夫をしています。
この鼻の部分も諸々の理由により見付け(正面からみた大きさ)が大きくなってしまいました。
その見え方をすっきりさせるために一面の銅板をはるのではなく3枚の銅板を段違いに取付てました。
これにより視覚的に『のっぺり』ではなく『すっきり』した印象をだしています。
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〜竜骨〜
大工さんは竜骨(りゅうこつ)と呼んでいましたが、発想の原点は
外陣と内陣の空間イメージを区切るシンボルとして思いついたアイデアですが、
唯識仏教の深層心理学では以下のような意味合いがあるようで、
その数字の八をいただきました。
仏教は元来、六つの識をあげる。
まずは眼識(視覚)・耳識(聴覚)・鼻識(臭覚)・舌識(味覚)・身識(触覚)
の五感のは働き(前五識)である。
つづいて第六識意識は、推理・判断などことばを用いた思考作用あり、
感情・意志なども含めたいわゆる「心」の働きである。
しかし唯識は、さらにその深層に働く第七識の「マナ識」と第八識の「アーラヤ識」とを発見した。
マナ識は潜在的な自己我執着心であり、アーラヤ識は、
さらにその深層にあって以上のすべての識を生み出す根源的な識である。
唯識仏教の深層心理学の内容を参考にさせて頂きましたが、
あくまで認識を新たにしていただくきっかけを作りたいがためですので誤解の無きようお願いします。
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