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これまでに設計してきた住宅や建築の家づくりプロセスを紹介します。
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生きたバリアフリー
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〜向拝階段〜
向拝の階段にタイルを張った状態です。
階段は高齢者でも登り降りが楽であるようにと蹴上(1段の高さ)を100mm、踏み面(足の乗る部分)
を300mmとしています。
又、段鼻(踏み面の先端)のタイルの色を変えることで視覚的にも分かり易くしています。
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〜スロープ〜
スロープの重要なポイントは当然勾配です。
ゆるやか方が楽になりますからできるだけそうしたいところですが、すればするほど距離が長くなります。
ここでは勾配をゆるやかにするためPの字のような形としています。
両サイドの黒い物は手摺の親柱でコンクリートを打設して硬化したあと位置を出して
コア抜き(※43)して親柱を設置していきます。
仕上げは刷毛引き(※44)をして滑りにくくして目地はひし形に入れることで
水をスロープの外へ流すように工夫しています。
※43・・・コア抜き(こあぬき)
コンクリート等をコップ状の筒を回転させ丸く貫通させる事。
配管を通す目的やRC造のコンクリートの強度を調査するための試験体採取に使用される。
※44・・・刷毛引き(はけびき)
左官の仕上げの手法の一つで塗り材をコテで押さえた後、
硬化しないうちに表面に刷毛で荒し目を付ける仕上方法。
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〜参道PC板施工〜
参道の仕上げはPC板を使用しています。
工場でコンクリートを型に流して作られるもので表面はいろいろなテクスチャーにできるほか、
工場で作られる為に製品精度が安定しています。
施工はインターロッキング(※44)と同様に行います。
今回は車両(乗用車程度)も乗り入れる予定で基礎をコンクリートで打ってあります。
上の写真がコンクリート部の配筋の写真でがこの曲線を地面に描く事が大変でした。
下の写真はPC板の施工状況です。
基礎のコンクリートの上に砂とセメントを混ぜたものを均一に均してその上に置いていきます。
ここでもR部分は手間がかかりますが出来上がりはとても良い物になりました。
※44・・・インターロッキング(いんたーろっきんぐ)
側面が波状のコンクリート製のかみあわせブロックのこと。
耐衝撃性や、耐久性に優れており、当初は公共的スペースに多用されていたが、
その後、戸建住宅のカースペース等にも用いられる様になってきた。
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〜スロープ仕上げ〜
スロープの仕上げは刷毛引きとする事で滑り止めの効果を出している事は以前お話しました。
その他の部分についてもう少し詳しくお話します。
この地方は冬になると積雪がありますがこのスロープは雪が積もったり凍ってしまうと
滑り台のように危険な場所となる可能性があります。
そこで目地(※51)を従来のタテ・ヨコではなくひし形にすることで極力、
水をスロープの外へ落ちるように工夫してあります。
施工は簡単ではないですが左官屋さんに腕の見せ所とがんばっていただきました。
ひし形の大きさや割付等は施工図を提出の上、事前にチェックを行っています。
スロープ中央の雨落ち(※52)は屋根からの雨だれを受け止める目的で配置しましたが
この位置はどのように決められたのでしょう。
実はすごく簡単でした・・と言うのも屋根が葺きあがってからスロープ施工の日までに降った雨が
地面に印を残していたからです。
その雨だれ跡の真上に雨落ちを配置すればよかったんです。
※51・・・目地(めじ)
コンクリート打ち継目や建築部材の接合部に生じる線状の部分
※52・・・雨落ち(あまおち)
「雨落ち溝」の略称で雨だれで地面がえぐれるのを防ぐために作られ溝等のこと
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〜外部アスファルト〜
アスファルトには細粒度(※55)、密粒度、浸透式(※56)と様々なタイプがあります。
設計では耐久性も高い細粒度タイプを使用することとしていましたが、
施工の段階で敷地に高低差があり庫裡、本堂、参道、道路のレベル(高さ)が固定されているため
アスファルトの水勾配が取れないとの報告をうけました。
業者さんからは水が溜まることを避けるために浸透式の物を使用させてほしいとの相談を受けました。
以前から住職と奥様には長持ちする事を気にされていましたし、
浸透式は目が荒く隙間に砂等が詰まると浸透性能が落ち
メンテナンスに手間とお金がかかってしまいます。
お2人にそれぞれの長所、短所を説明すると何とか細粒度を使用してほしいとの事でした。
建設会社にレベルを出してもらい設計担当としての思考錯誤の末に自転車置場の砂利の部分を
うまく利用して水を集める事で勾配の確保、雨水の排水の確保に成功することができました。
このような時こそ過去の経験や新たな閃きがものをいいます。
※55・・・細粒度アスファルト(さいりゅうどあすふぁると)
密粒度アスファルト混合物より細骨材分が多く密粒度アスファルト混合物と比較し
耐久性ひび割れの耐性に優れる。
※56・・・浸透式(しんとうしき)
雨水をアスファルト面から雨水を地下に円滑に浸透させることのできる構造。透水性舗装とも言う
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〜宮殿(くうでん)仮置き・輪灯(りんとう)位置決め〜
背面にある丸い柱の部分は漆等で仕上る前に測量をして宮殿側にて丸く加工を
施していますからピタリと納まっています。
又、脚立の辺りには輪灯が天井から吊下げられています。
この輪灯は古くから火を使用してきましたが火災の恐れも大きいことから
近年では電気の光が使われています。
明秀寺では最新のLEDライトに点滅を繰り返させることで炎の『ゆらぎ』を演出しています。
当然、この輪灯も別途工事となっているため本体工事との取り合わせが大切で
特に電気を使用するので電気の配線は建築工事に含ませています。
ここでも輪灯の配線を極力見せないようにするために電気屋さんに協力してもらい
天井に電気の線が走らないように工夫をしています。
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〜手摺取付け〜
手摺を取り付けるために参道のPC板にコア抜きを施しているとこです。
スロープでもコア抜きにて手摺の親柱を設置しましたがここでも同じ方法で行っています。
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〜柱脚の板金巻き〜
向拝の柱の足元は銅板にて巻き上げ保護します。
住宅等でもよく見られますがただのお飾りではありません・・・
外部の独立した柱は足元に石や金属を使用しますが当然固定しなくてはいけません。
ここでは基礎と石と柱を一体にするためボルトを通しています。
このボルトは柱に穴を掘ってそこで締め込んでいます。
当然、穴が開いた状態となるため埋木(※56)をします。
しかし柱の足元は雨の跳ね水等により湿、乾をより多く繰り返します。
そこでこの足元に金属の板を巻くことで跳ね水や降り込んだ雨から柱を保護しています。
木材にとって木口(こぐち)は弱い部分なので屋根の母屋や桁でも金属を巻いている
光景をよく見かけますね。
※56・・・埋木(うめぎ)
木材の節穴、割れによる隙間、釘頭などを隠すために埋め込むこと。
またはそれに使用する木片のこと。
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〜庭石・靴脱ぎ石〜
今回の工事に伴い庭にも砂利を厚めに敷き詰めることにしました。
砂利は手入れの容易さと見た目の美しさを目的とし厚めに敷き詰めることで
雑草が生える事も抑えてくれます。
庭園もお化粧直しで置かれていた石の量や配置等をやり直ししました。
奥まった位置にあるため重機も入れない位置となったので庭師さん達は
昔からの方法で丸太を3本組み頂点に滑車を付けて重たい石を
次々と目的の位置まで移動させていきます。
一歩間違えば大怪我にもつながりますし建物にも接触しないようにと細心の注意を払って頂けました。
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〜鐘堂・撞木(しゅもく)〜
撞木は釣鐘を鳴らすために打つ木製の棒ですが長年愛用してきた撞木もいよいよお役御免となり、
本堂の建て替えに合わせて取り替える事になりました。
木材は桧材を使用していますが丸太から八角形に成形し、
撞座(つきざ:鳴らすために打つ位置のこと)はさらに円形にして金属の輪を取り付けます。
これは釣鐘を突いた時に撞木が割れる事を防ぐためのもので両端に今まで使用していた物を
取外して使用しています。
これからも年月の記憶を刻み続けることでしょう。
試し打ちでは奥さんから『良い音がでるね〜』と満足そうな笑顔がこぼれていました。
仕上りは住宅建築ギャラリーをご覧ください。
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