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これまでに設計してきた住宅や建築の家づくりプロセスを紹介します。
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生きたバリアフリー
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〜明秀寺完成への軌跡〜
今は見ることも叶わない本堂の凛々しい姿・・・
源義家の子孫栄伝が1475年に美濃国矢道村(大垣市矢道町)に建てたのが始まりとされ
現在地には1701年に移されたらしいです。
移築後300年は経過しています、 やはり日本の木造技術は世界に誇れます。
しかしこの写真をみて『痛んでいる』とわかる人はあまりいないでしょう。
実は中央に立っているピンク色の柱みたいな物ですが何でしょう?
実は、跳木(※1)が瓦の重さに耐えられなくなったのでそれを支えるために何年か前、
鉄骨の柱で下から支えを取り付けたそうです・・・
社寺仏閣の多くで最初に痛みが出てくるのがこの部分のようです
・・私達で言えば買い物した重い荷物を手を横に伸ばしたまま持っている様なもの・・
とにかく、約300年の永きにわたり屋根と雪の重量、風の力にも耐え抜いてきましたが
限界がきてしまいました・・まさにようやく荷を降ろすことができるのです。
何世代も門徒を含め沢山の人が足を運び、住職や坊守さん(奥様)にとっても
いろいろな想い出の詰まった本堂ですから解体となると淋しさも一入(ひとしお)でしょう。
人々の『想い』も沢山詰まっているで、ご住職にしっかりとお経を上げて頂きました。
※1 跳ね木(はねぎ)・・・伝統的な日本家屋やお寺などに見られる屋根の隅木(※2)
※2 隅木(すみぎ)・・・寄せ棟(よせむね)や、入母屋(いりもや)等で水の流れる方向が異なった
2面がぶつかる部分(四角い紙を三角に折った時の折れた線の部分)に入れる下地の木
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〜解体・瓦の下には〜
古い建物の瓦葺き屋根には葺き土(※3)が施され(施工され)ているケースが大半を占めています。
この『葺き土』は瓦の下にある時は雨漏りを防ぐなど重要な役割をもっていますが、
いざ解体、処分となるとたいへんなのです。
瓦を撤去しようとすると土が風に舞って近隣にご迷惑がかかりますし、
処分には藁などの混合物があるため引き取り手が少ないのです。
特に近年は不法投棄などの環境問題も発生し、
建物から発生した産業廃棄物の処分地が不足している状況です。
このため建築主さんの負担がどんどん増すばかりですね。
一概には言えませんが解体費用は同規模程度の建物で比較しても
4・5年前の2倍位までも上がっているようです・・・
この葺き土を撤去する際には、よ〜く散水して飛散しないような配慮も必要になりますが、
絶対に飛ばさない事は不可能ですから事前に近隣の方へ連絡を入れて窓を開けない、
洗濯物を干す事も遠慮していただいた方がいいです。
※3 葺き土(ふきつち)・・・瓦の下に使用する練り土のことをいい、
長さ60〜75mm(2〜2.5寸)の藁すさ(わらすさ)を混入し、良く練り返したものが理想。
粘土質を有し、接着性と腰のあるものが良いとされる。
瓦を馴染ませ、瓦を安定させる目的もある。
現在では耐震的にも屋根が重い事は不利になるためルーフィング等が使用される事が多い。
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〜解体中の本堂内部〜
本堂内部の解体中の写真です。
天井の上には丸太が縦横無尽に掛けられていますが今日のような四角い物はあまり見当たりません。
現在では電気ノコギリを使い数分で丸太を四角に製材できますが、
昔はちょうな(※5)を使い木材の荒削りをしていましたから
手間と時間がかかり小屋組などの丸太は重要な物を除いてわざわざ加工しないんです。
写真でも中央の太い丸太梁は側面が平らになっていますよね。
その丸太の下には何故か毛布が・・・? 実はこれ、紅梁と言われる化粧の梁なんです。
解体して処分するのに何故?と思われた方も多いでしょうが
この梁は再度利用するため傷がつかないように養生をしています。
新しい本堂の何処かにでてくる予定ですからお楽しみに・・・
※5 ちょうな(釿)・・・木を削る大工道具として古くから使われている道具で、
鍬(くわ)のように使用するが大きく振りかぶる事はしないで小振りに使います。
形状も少し異なり刃先が短く変わりに手で持つ部分の木が先端辺りで『く』の字に曲がっています。
大工さんの中には今でも使用している方も見えます。
・・ちなみに空振りすると当然足を切るので注意が必要。
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〜地鎮祭〜
建築工事では工事を開始する前に神道式の地鎮祭(※6)を行います。
しかし神道式ではないので、仏式の『屋敷祓い』と思いきや真宗大谷派では『屋敷祓い』は無いようで
住職にお伺いしましたら、『起工式』(※7)でいいようです・・・本当に難しいですね〜。
住職自らありがたいお経をあげていただきました。
さすがに専門ではないのでこの辺りの言葉や意味については
捕らえ方に間違いがあるかもしれませんので興味のある方はお調べください。
※6 地鎮祭(じちんさい)・・・地鎮祭は土地のお清めと工事中の安全を祈る儀式の意味合いが
強くなったが、本来は日本の土地は八百八(やおよろず)の神様のものなので
勝手に使い神の怒りにふれないため『この土地をお借りします』と契約を結ぶ儀式で、
完成時には地鎮祭で借用の契約をした神様を祀るために神棚を設けるのが本義といわれる
※7 起工式(きこうしき)・・・建築では一般に工事の着手に当り関係者などを
招き行なう記念行事をいう
※ちなみに・・・某大学のある先生は、仏と神との大きな違いを「仏とは頭が下がるもの、
神とは頭を下げるもの」と述べているらしいです。
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〜地盤調査〜
解体・整地した部分でSS試験(※8)を実施しているところです。
所見では、盛り土の上に同規模の建物が何百年と立ち続けていましたから十分安定した
地盤といえるでしょう・・ということ。
しかし、建築基準法でも地盤の耐力により基礎の形状が規定されていますし
地盤調査を行う事で目で見える安心につながります。
その試験結果には保証(地方、工事業者による)がつきますから設計時点で
地盤調査をするように指示しています。
写真は実際に立ち会ったところです。
※8 SS試験(スエーデン式サウンディング試験)・・・簡易的な地盤調査の手法の1つで
安価なため住宅等の地盤調査に多く使われはじめた。
実際の方法はロッド(鉄管)の先端にスクリューポイントと呼ばれる円錐形の錐(きり)をつけて、
地面に突き立て、段階的に100kgまでの鉄の重りを載せた時の沈み具合を測定する。
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