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 トップQ&A>住宅の性能を人との関係から考える
Faq家づくりQ&A、 設計フローや設計監理費用について紹介します。 
 

日々いただく住宅や建築に関する質問、建築主さんとの会話の中から拾った疑問など、ご参考になりそうなことをジャンル別にまとめてみました。
計画・設計・構造・設備編      
・住宅の性能を人との関係から考える

住宅は言うまでもなく人が住まうもの、その性能も人との関係において考えるという基本を忘れてはいけません。
以下の文章は、ある建設会社の講習用の資料として作ったものです。
長文になっていますが参考にしてください。



住まいを創るならば、知っていると理解を助けてくれる基本中の基本があります。

・ 「建築」をかたち作る(建築を考える)基本分野

a 構造(骨組み、基礎)
b 設備(電気、給排水、空調、通信)
c 材料(全ての部材に関連する)
d 計画(間取りなど使い勝手などを検討すること)
e 法令(都市計画法、建築基準法、登記関係法など)
f 意匠(デザイン)


 a構造(骨組み、基礎)

柱、梁、床組、屋根、外壁、間仕切りなど空間を形成するための骨格となる部分で、人間の体でいえばまさに重量を支える骨格にあたります。
地震や台風の横揺れ(水平力)雪の重み(鉛直力)に耐えてくれる役目を果たします。
 なお、建築基準法では、柱、梁、基礎、床組、外壁、階段を主要構造部ということばで表現します。
また、開口部(アルミサッシ、内部木製建具のフスマや障子、ドア)や手スリ、小梁、屋外階段、付け庇などは構造上主要でないとしています。
 

b設備(電気、給排水、空調、通信・住まいの神経系統)

 コンセント、スイッチ、水道栓、排水溝、エアコン、床暖房、電話、インターネット回線など、現代人が生活するためにはなくてはならないものがほとんどで、人間の体でいえば血管や神経類でしょう。
食事をする、入浴する、勉強する、友人と連絡をとる、など住まいの中での生活のどの場面も不可欠なのが設備、また肌に直接触れるのも設備といえるでしょう。
 

c材料(全ての部材に関連する・材質を考える)

 構造が骨格として、地震や台風、大雪から人間を守ってくれる役目があるとすれば、それは自然の計り知れない大きな力から守ることすなわち物理的に人間を守ることになる。
「材料」とはそれに対して、フローリングやサイディング、クロス、木材、構造用合板、金物、アルミサッシなど住まいをかたちずくっている部材そのものの性質、性能など物性を考える分野です。
 たとえばフローリングの耐久性やサイディングの防火性、クロスの不燃性、木材や構造用合板の強さ、アルミサッシの断熱性などを検討することです。
火災時にお隣からの延焼しないようにする、クロスの接着剤から発散するホルムアルデヒドで子供がアトピーに悩まぬようにする、冬にサッシの際で寝ていて寒気がしないようにするなど。
 構造同様に、設備ほど普段はなくていきなり困ることはないが、やはり不可欠な分野でしょう。

d計画(間取りなど使い勝手などを検討すること・ソフト上の骨組み)

 「間取り」という言葉が専門用語には聞こえないほど一般的になっており、建築主さんにとっては、住まいを考える多くの部分を占めてしまっている作業です。
住まいを建てる敷地の条件を把握して、家族の意見を集約の上同意を得る、使いやすさ快適性をめざして行う最初の「儀式」といってもいいでしょう。
言葉を広く捉えると、住宅展示場に足を運んだり、インターネットで情報収集をしての下調べも計画といえます。
 構造が住まいのハード上の骨組みとすれば、ソフト上の骨組みを創るのが計画と言えるかもしれません。

e法令(都市計画法、建築基準法、登記関係法など)

 構造が骨格で設備が神経であるとすれば、確認申請を提出して合格させたり、性能保証の検査を受けたり、建物登記などは、生まれてくる子供にちゃんとした社会の一員としての戸籍を用意してやるのと似た作業です。
 確認申請を役所に提出して法令上のチェックをすることは、構造、設備、材料、計画について国で定める最低限の性能をもった建物であることを役所が確認してくれることになります。
 

f意匠(デザイン)

大多数の建築主となられる方が夢に描いておられるのは、外観のイメージやインテリアのイメージでしょう。
人間ならば、ファッションにあたるのかもしれません。
したがって、その感じ方に個人差が大きいのもこの分野でしょう。
外壁の色や屋根の形状など検討の際、注意しなければいけないのは、ファッションがそうであるように、建物としての機能上必要性のあるデザインであるべきだということです。
また、デザインが表面的で重要には感じられない事項かもしれないが、クロスの種類やフローリングの材種、照明器具の雰囲気などのコーディネイト次第で構造、設備、材料検討、法令面の検討のそれぞれが完璧に近くとも、工程上仕上りの評価は最後となること、また目に付きやすいがために、それだけを建築業者の能力の全てと勘違いする方が少なからずいらっしゃるということでしょう。


・ 住まいずくりを考えるとき、検討しようとする事柄がどの分野a b c d e f のどの分野に該当するのか、またそれがどの分野と絡み合ってゆくのかを見直してみて、果たして自分の判断が正しいのかをよく見極める必要があります。

将来を見据えた住まい像を考えたとき、必要とされているものを「人と住まい」の関わりという切り口から整理してゆきますので、自分にとっての住まい像は何かを考えて見てください。


・人と住まいの構造
・人と住まいの火災
・人と住まいの劣化
・人と住まいの維持管理
・人と住まいの温熱環境
・人と住まいの空気環境
・人と住まいの光・視環境
・人と住まいの音環境
・人と住まいのバリヤフリー
 

・人と住まいの構造

 〈建物に加わった外力には通り道がある〉
人を地震、台風、大雪から守る役目が構造です。
何時、地震に襲われても不思議でない時代に入ったとも言われています。
安全性を確保するには、構造計算という処理をしますが、その処理過程の基本は難しくありません。
地震は地面が揺れることは子供さんでも体で知っていることですが、
構造は地面から伝わってくる垂直振動と水平振動がまず基礎が受け止め、土台に伝えて、柱や壁に流れる、さらに2階の梁から2階の柱、そして屋根の梁から母屋、垂木へと伝わる、といった具合に必ず力の経路があるということからまず理解しましょう。
同様に、台風のときの流れは外壁や庇、屋根が受け止めて、今度は逆コースで基礎まで伝え、地盤へと流す経路となります。
               
そして、それぞれの部材は受け取った力に耐えられなければならないということ、次の繋がる部材に力をしっかり渡してやらなければならないということ、すなわちその接合部の材料(金物)もまた、緊結が丈夫でなければならないということになるのです。
人間の社会と何かしら似ていませんか?
部材それぞれは地震時以外のときの役目があるが、いざ地震の力が加えられたら、一致団結して手を繋ぎ、エネルギーを空中に放出できるよう頑張るということになります。

逆に、どの部材が強いから大丈夫という言葉が不正確ともいえるのです。
「うちの工法はスジカイ金物が強いから大きな地震がきても大丈夫」とか「柱は何寸だから大丈夫」という言葉はかなり不正確な表現といえます。
流れてきた力を受けて次の部材に流すのに必要充分な部材の材寸と緊結金物や継ぎ手工法によることが正確な表現でしょう。
それはコストバランスの良い構造設計と呼べます。
〈重心と剛心〉
力の流れる経路に注目することともうひとつ、それは建物全体の重量のバランスと壁量のバランス(剛性のバランス)です。

これは自分が電車に乗っているときのことを想像するとよく理解できます。
荷物を持って何も掴まらずに電車の中央に立ったときとそうでないときとの不安感や安定感を思い出してみると明らかに誰でも荷物を持っているときの方が重いけれどもにっこり安心です。
荷物を持っていない状態は建物全体の重量の中心(重心)が荷物を持っている状態より上のほうにあるのと同じことです。
また電車に乗っていると、ときたま強く揺れるときがある、近鉄揖斐線並みの揺れを想像したとき、思わず片足のかかとを踏ん張ったり、ひざを曲げたりする。
人間の場合は動物だから揺れの具合に合わせてそんなかたちで力を逃がしているが、建物はそんな調子にはいかないのです。
そしてこのとき、揺れは人間の重心に対して作用しており、またそれを受け流している、そしてそれに耐えているのは体の各部分であることにも注目してみてください。

建物のこれにあたるのが骨組み、すなわち構造体。
建物は自由自在に動くことができないから重量の中心(重心)と構造体の強さの中心(剛心)の位置にズレが大きいほど危険といえるのです。

今、話題となっている耐震診断の中身はまさにこの内容になります。
建物の現況を調査の上、構造計算を実施してみる、その上で弱い箇所を探すことになるのです。
つまり、電車とつり革と荷物を思い浮かべること(?)がヒントです。

・人と住まいの火災

  「地震、雷、火事、親父」と恐いものの代名詞にもなっている火事に対する安全性は住まいの性能のひとつといえます。
もっとも親父は恐くなくなってしまいましたが、これも実は憂うべき現象ですがここでは関係ないので触れません。
  火災から身体や財産を守るには、二つのポイントがあげられます。

 〈安全な避難と防火仕様〉
ひとつは安全に避難や脱出が出来るようにすること、もうひとつは外壁、床、窓などが火に強いことです。
ごく当たり前のことですが、意外と対策の講じてある住まいが少ないのです。

具体的には「感知警報装置」を台所、居間、寝室など、取り付けておき、例えば、台所で火災が発生したとき、各室でベルが鳴り、避難するということになります。

住まいの場合、何百坪の大邸宅はともかく、ほとんどが勝手知ったる我が家ですから警報にさえ気がつけば、そして体さえ動けば避難は可能でしょう。
そして、避難の容易な間取りの工夫、階段手スリの設置(建築基準法では義務)、フットライト(足元灯)の設置も考えてもよいでしょう。

外壁、床、屋根、窓が火に強いということは、自分の住まいから火事が発生した場合と、お隣からの延焼により燃えにくいようにすることです。

燃えにくさには段階があり、外壁材の石綿系サイディングなどのようにセメント分を含んでおり、一般的には12mm程度が多く、住まいに使用するには防火地域などの都市計画で定められた地域でなければそれで充分なのですが、さらに50mmなどではコンクリートの壁同様に「燃えない」(不燃材というより耐火材)といえます。

台所の内装下地材としてよく使用される石膏ボードは準不燃材といって10分は燃焼しないのを基準とされています。
燃えにくさに加えて、有毒なガスを発生しないことも大切で、内装材特に多く使用されているクロス、板材など、燃えても人体に有毒なガスを発生しない材料を使用する必要があります。
有機系の紙、木材、ケイソウ土などは有効といえます。
  
いずれにせよ、住まいの性能に期待しすぎず、地震、火災などに対する心構えを住まう人が持つことがさらに重要といえます。
  
  

・人と住まいの劣化
 
  人間の場合、年齢を重ねるといろいろな部分に障害が出てくるものです。それは骨格であったり、内臓であったり、神経であったりします。

住まいの場合も当然、新築時をピークに年を経るごとに劣化してゆきます。
人間の神経にあたる設備関係はやはり毎日一番お世話になる機能であり、時間的には比較的早い時期に点検の必要となるといえます。
建具などの物理的に動きの伴う部材についても同様です。
これについては、サイクルが短いため、他の項目でも出てきますが「維持管理」が必要といえます。

〈構造の劣化・耐久力確保〉
では「劣化」を問題とする部材は何に関連するかといいますと、構造つまり人間の骨格にあたる部分を取り上げるべきといえます。
すなわち、住まいのその一生を支えてくれるのは、構造の耐久力ということになり、設備は構造さえしっかりしていてくれれば交換も可能だからです。
構造も大まかに木造、鉄骨、鉄筋コンクリートなどと分類できるのですが、特に木造などはやはりなんといっても「シロアリ」「腐朽菌」に対する対策が重要な劣化対策です。
これについては、床下の通風確保もしくは、コンクリートとシートによる湿気の遮断、屋根裏の通風確保、シロアリや腐朽菌に強い木材材種の使用(桧、ひばなど)防腐剤、防蟻剤の塗布などが上げられます。
ここで特筆したいのは、人の住んでいる住まいとそうでない住まいの加齢速度がおおきく異なるということではないでしょうか。
住まいも人が住んで通風してやるなど、介護を怠らなければ100年でも住めるのでしょう、もちろん、先に書いた処方箋を守れているのが条件です。
   

・人と住まいの維持管理

  「維持管理」とは人間の場合でいえば、健康管理とでもいうのでしょうか。ただし、きっと住まいの方がシンプルで簡単ですから大丈夫です。

「劣化」にも関連していますが、設備、特に給排水管とガス管は構造などに比べると耐用年数が短く損傷があれば事故に繋がりかねません。
ところがこれらは、建具などのように普段からお目にかかることはなく、異常を発見しずらいものです。
人間でも内臓など表面からは症状が判断しずらい場合は胃カメラを飲んだり、エックス線撮影をしたりします。
住まいの場合は水漏れやガス漏れが発生しやすい箇所を、まず点検しやすいこと、そして補修できることが必要となります。

〈普段覗ける・抜き変え可・腐食しない〉

台所や洗面所などに床下点検口を用意しておき、簡単に覗けること、そして水道やさんがそこで補修をするスペースがあることなどです。
ところが、そこだけでは補修できないコンクリートや壁の中などに隠れている部分もあるわけです。
特に給水管や給湯管(お湯)は配管類のなかでも心配の種ですので、サヤ管工法という工法を採用する場合があります。

これは、食道にあたる配管と胃カメラにあたる配管が用意されており、もしものときは人間が胃カメラを飲むように実際水や湯が通過する配管を抜き取って交換するのです。
また床暖房などのようなそれさえも機能上無理な場合の隠ぺいされた配管にはポリブデン管という住まいがご存命中は腐食することのないすばらしい材料も開発されています。
もちろん、肝心な住まう人がたまに様子をうかがってやることが最も重要といえます。


・人と住まいの温熱環境
 
この項はかなり花形の話題に関連しています。
「地球温暖化」「京都議定書」「オゾンホール」などのことばは新聞紙面やテレビでよくお目にかかるでしょう。

これらと住まいとの関係は、密接に絡んでいます。
床や壁、天井、屋根などに断熱材(エネルギーの通過を遮る材料)を使用し、窓に断熱サッシやペアガラスを使うことにより冷暖房機器の効果も良くなる、気密度を上げることにより(隙間を少なくす

ること)冷気や暖気を逃がさないようになる、また真夏に直射日光が射し込まないような建物の形状を工夫することも冷房エネルギーを節約することに繋がっています。

〈故人の教えに現代科学をプラスする〉

「夏を旨とすべし」という徒然草第55段の一節のごとく、住まいを冬は何とか住めるが夏の暑さをしのげないのは出来の悪い家だ、と一括してしまっている吉田兼好のことばを誤解している建築屋の何と多いことでしょう。
確かに故人の格言は言いえて妙と感じるくだりがたくさんありますが、それを現代に当てはめると、間違っていることもあります。
その精神論はここでは別としても、吉田兼好の生きた時代は13世紀の南北朝の時代でしたが、現代においては気象データがリアルタイムに手に入り、建築材料の性能が科学的に把握できる時代に私たちは生きています。
住まいの快適と感じる基準には個人差がありますが、そのそれぞれに合わせてくれるのも可能になってきています。

特に、古来からの木造の軸組工法においては、木材の供給環境や工法システムが大きく変わっていることも一因としてあります。
 
冬を暖かく夏を涼しく過ごせるように工夫することは、住まいを地震、火事、劣化などから守るのと違い、室内での居心地を体感的に良くすることになるため個人差がありますが、先述したように技術上かなり進歩しています。

住まいの外部と内部を熱的に遮断すること(断熱)、内部を気密化して換気量をコントロールでき

るようにすること(計画換気)、夏場の日射を有効に遮蔽すること(日射取得)が大きなポイントです。


このあたりの話題は、方法や考え方がたくさんあり、かなり裾野が広がります。
 
人が快適に過ごせる住まいを造ることは地球温暖化防止に寄与するともいえるのです。
 

・人と住まいの空気環境

残念ながらおいしい水が売られているように「美味しい空気」も直接ではないにしろ、別のかたちで買わなければいけない時代になってしまいました。
これも皆、人間のしてきたことの結果であることは悲しいことです。
「シックハウス症候群」ということばを聞かれたことのない方は少ないでしょう。
また、過去に新築直後のお宅を訪問されて目がチカチカしたご経験はなかったでしょうか。また、子供さんがアトピー性などのアレルギーで悩まれたことはなかったですか。
小学生の頃、生物の時間にかえるの解剖を思い出してください、そしてビンの中に入れてあった保存用の消毒液、殺菌液がホルマリンでした。その気体状態のものがホルムアルデヒドといって建材ではフローリングや合板に使用されています。
この建材から放散されるホルムアルデヒドの有毒性がシックハウス症候群の原因であるということがわかってきたのです。

前出の「材料」の項でも触れましたように、壁材、クロス、接着剤、窓枠、巾木などの内装の仕上材はホルムアルデヒドの放散量が少ないもの(0.5mg/l以下)を使用すること。
他には無垢材といって、桧や杉、松などの自然材をそのまま板や柱、梁に加工した製材そのものを使用するのも、良い材料の選択法ではないでしょう。

個人的には後者の内装仕上の方がデザイン的にもナチュラルな雰囲気が出せて、積極的な対策と考えています。
実は、材料にばかり注目するばかりでなく、設備の力を借りてみる方法として、換気扇を取り付けることも良い方法なのです。
「温熱環境」の項でも出てきましたが、換気量を調節してエネルギー消費量をコントロールするのと同時に、有毒な気体を排出してしまうこともできるのです。
人の健康と住まいの密接な関係が感じられないでしょうか。

・人と住まいの光・視環境

住まいの過ごしやすさを得るのに、全てを科学的にコントロールしようと言うのは、いくら科学が発達したからと言って強引過ぎます。
朝起きて、太陽の陽をあびて「今日も一日頑張るぞ」と思ったり、住まいの立地条件にもよりますが、窓を額縁にして見える山とか海は人を幸せにしてくれるものです。
心理的にも、昼間から暗い部分のある家は、当然これも感じ方に個人差があるものの病気などしているときは気が滅入る一因になりかねません。
 
外気の環境が苛酷な時、すなわち冬の雪の降る日、真夏の暑い日などは、床暖房の暖かさやエアコンの涼しさが有効に働くように「温熱環境」の項でも述べましたような工夫も必要ですが、中間期すなわち気持ちの良い春や秋には、窓を全開にして陽を入れたり、風を入れることは当然でしょう。
 
他条件、特に窓から逃げる熱量が多くなりすぎなければ、窓面積を大きく取ること、これも大切なことです。
 
先の徒然草第55段には「細かなものを見るときには、上げ戸の部屋よりも、明るい引き戸の部屋のほうが都合がいい。」とあります。
  また、建築基準法にも部屋の面積に対する1/7以上の窓を取るように、いみじくも義務ずけておられます。
 
ただし、窓がどの方向を向いているかは確認しておく必要があります。
特に、エネルギーロスの大きい西面の開口部は、逆に「温熱環境」を悪くしますのでご注意下さい。

・人と住まいの音環境
 
住まいの多くは個人の所有物、家族の共有物ですから、お兄ちゃんの部屋から聞こえてくる音楽が弟にとって騒音なのかどうかとか、床に落とした物音が気になったとか、通リを走る自動車の音がうるさいといった個人差のある感じ方に差のあることは、そのご家庭で解決していただく問題ですが、技術的に予防策を講じておくことは限界があるにせよ可能です。

音を遮断することを遮音、音を吸収することを吸音といって、遮音するには質量を大きくすることで究極の遮音材はコンクリート、吸音材にはグラスウールなどがよく使われます。
 
ちなみに品確法による、いわゆる「うるさい」というのは65ホン、「小さく聞こえる」で45ホンです。
 
音の大きさはそのエネルギーの量で、他に周波数による高い低いという要素もあります。
低い音と言うのは振動といって、地震時に地鳴りがしたと言ったりするのはそれのことです。

住まいの内部の音を完全に遮断することは不可能に近いですが、果たして遮音することが良いかどうかは家族で良く話し合いましょう。
なぜなら、住まいの場合、「光・視環境」同様に遮音を完全にすることにより裏返しの弊害も出ることがあるということです。

・人と住まいのバリヤフリー
 
「バリヤフリー」ということばが世の中に出てから久しいのでおそらく知らない人のほうが少ないのでしょう。
高齢化社会の現代では、おじいちゃん、おばあちゃん、体の不自由な方、一時的でもケガや病気で悩まされている方にとっても暮らしやすい工夫が必要です。

歩行、入浴、階段の昇り降り、入浴、トイレの使用などの日常動作が困難になる場合に備えて、バリヤフリー化しておくのです。
歩行で転ばないように段差をなくす、車椅子での移動がしやすく、介助する人も介助しやすいようにしておくなど(廊下など通路の巾)、新築時に必要な対策を講じておくべきでしょう。
間取りと大きく関わりがあるため、構造と同じく、計画の段階で検討を加えておくべきでしょう。
 
ユニバーサルデザインということばも良く聞かれることでしょう。これはハンディキャップのある人を含めた全ての人が安全で快適に暮らせるように配慮してデザインすることです。
ドアノブの形状や階段テスリの形状など、建物に限らず、ハサミや掲示物を止めるピンなども目が不自由な方でも使用できるものがあります。
 
出入り口の敷居とフロアーの段差がない、ドアノブがレバーハンドルである、便所の手洗いが自動感知式である、ドアより引き戸が多い、ユニットバスや洗面所には伝い歩きが出来るほど手スリが多用されている、などなど、いくつかは誰もが見かけたことがあるのではないでしょうか。
 
 
一歩進めて「福祉住環境」という面から住まいを考える必要の生じることもあります。
これは、もし家族に介護の必要な人もしくはそれに近い人がいた場合は、その程度や病気の状況に対応した設備を配置しておく必要となるでしょう。
車椅子をカーポートからポーチ、玄関、居間へと楽に移動できるようにスロープを多用する配慮、トイレや浴室、廊下を介護者が同伴することを前提とした間取り、視力の半減した人には昼夜を問わず明るい環境を作らなければなりません。
 

住まいと人との関わりをいくつかの切り口から眺めて、これからの住まい(次世代の住まい)を考えてみましたが、こうあらねばならないという答えは、決してひとつではなく、建築主さんが決めてゆくものです。
今、住まいについて考えてみる材料もしくは指標として、知っておくべき大きな流れを知っておくことは大切です。
コストパフォーマンス(コストとという性能)を考えても、
納得して100点満点に近い住まいに成るかどうかは、建設会社の努力もさることながら、住まい手にかかっているといえます。



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