住宅建築家の設計と住宅専門会社の設計には何も違いが無いようにも思えますが、大きく違うのをご存知の方は少ないのでしょう。
もし私が住宅メーカー設計部のスタッフであれば、おそらく「御納得がゆくまで無料でプランを作り直させていただきます。」とお答えすることでしょう。
あなたの住まいの設計プランをまとめる作業は、あなたの夢を達成するという「目的」に結びつくはずであっても、工事業者にとっては工事そのものを契約受注に結びつけるという目的があります。
何千万円という工事の契約を成立させたい住宅専門会社の設計者と、設計監理契約を結び設計図を描きたい建築家とは、どちらがあなたにとっての家創りのパートナーだと思われますか?
どちらもパートナーとなりうるのですが、建築家の描くプランは、設計図を描き工事を監理する、契約をあなたと結び、建物を創りたいという目的にベクトルが向けられているのです。
すなわち、それはあなたの夢を描き切れるどうかに私たちの運命が掛かっているのです。
(ちょと大袈裟かな?)
つまりプランの内容自体で、あなたの良い評価を得る必要があります。
それに対して、工事の契約を成立させなければならない設計者には、時間と予算の制約のなかで会社の売上確保に貢献するためのテクニックも同時に駆使しなければなりません。
もちろん、私たちにも予算の制約を無視することは許されません、しかしその使い道は一方向のみを向いているのではなく、いろいろな選択の幅を広げて、あなたと模索します。
この両者の立場の違いは、全て不利に働くとは言えませんが、知っておかなければならない「家つくりの最初の第一歩」かもしれません。
第一ボタンの掛け違いに気ずくことなく、住宅工事業者さんの設計担当者を家創りのパートナーと思い込むのは、生まれて初めて見たネコを親と勘違いしている子犬みたいなもの(?)かもしれません。
両者の平面プランがそれぞれ1案、それもほとんど同一内容のものが、仮に目の前に提出されてきたとしても、それを見て、あなたが「なんだ、どちらが描いても一緒じゃないか」と早計に結論を出せないのです。
住宅工事会社が描く内容は、あなたが住宅展示会でご覧になったものを思い浮かべれば理解できるようになっているはず、その場でオーケーを出せば即座に造ってくれます。
設計を専業とする建築家の描く内容は、平面プランのみで描き切れるものではなく、工事が完了して初めて筆を置くのだという、ある覚悟が含まれた、アプローチあるいは提案であるべきだと考えているのです。
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