伊吹颪と台風にさらされてもじっと地面に張り付くように耐えていられる住まい。
強風には抵抗的ですが夏の夜の涼風は取り入れ、また夏の日差しは遮り冬の日向は大歓迎。
日本かわらの美しさもさることながら良妻賢母な住まいです。
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土地の環境条件を思い、平屋をイメージすることから始めたこの計画、
何気なく見ていただく方には「和風・数奇屋ですね」と評されているようです。
南庭に計画されているのも和風庭園らしい、設計者として見てほしいのは
「質実剛健、良妻賢母な住まいなのですよ」と、中身のことです。
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玄関アプローチは広く取り軒下としての機能を雨よけ、庇というより「寄り付き」とも呼べるかもしれない。
常に軒と呼ばれる空間のある住まいには余裕を感じます。
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東よりのアプローチになっており、南面は全面テラスとすることができ、
居住部分全域に陽が入る配置になっています。
これは太陽のエネルギー(暖かさや明るさ)を最大限取り入れて利用しようとしてきた
先人の工夫を取り入れるオーソドックスな技術を思い起こしてこだわってみました。
トップライトもきめ細かく配置して昼間は照明を点灯する必要のない内部空間も実現している。
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リビングからダイニングへの広がりは外観からは想像しがたい大らかさがあります。
意外と知られていない、建物外周部の耐震壁を強化しバランス良くすることは、
内部空間を広く出来るという耐震構造上の工夫が隠れています。
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普段は収納、組み合わせればテーブルとなる南面の腰掛です。
これから始まる生活でのシーンを思い浮かべ、それが結晶したのがこの家具です。
普段はおもちゃ箱、親しい友人が集合すると6コがドッキングして大きな食卓テーブルになってしまう。
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せっかく創るんだから楽しみも創りましょう。
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トップライトは明るさと暖かさ、涼しさを取り入れる工夫は住まいには不可欠。
それは決して贅沢などではなく、むしろ逆、電気代の節約のためと思ってください。
この住まいにおけるトップライトの役割は明るさを取り入れるという本来の役目に
風を呼び込むことと冬の陽の暖かさを取り込むこと、さらに夏の日差しは遮ることをプラスしたのです。
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居間の床は30ミリ厚の赤松フローリング、ご存知ですか?
松は木材の中でもピカイチの蓄熱性能があるのです。
蓄熱性能とは、日差しの直射を受けて熱エネルギーを保持する能力のこと、
鋼材が898(kcal/m3℃)とすると石が560で京壁が272、木材は186というデータがあります。
これを見るとさほどでもないように思えてきますが、松については木材の中でもこの蓄熱比が大きく、
フローリングとして日当たりの良い居間に一面張ったことを断熱気密に取り組んでいる知人に
褒められました。
「松を南面の居間の床として前面に張ってみなさい、気密がいい家だと昔のたたき土間と似た
蓄熱効果をもたらしてくれますよ」と教えてくれたことを思い出します。
論より証拠、この床は素足でも暖かいのです。
ちょうど電気式の床暖房がジンワリとフローリングの下で効果を出しかけてきた頃の暖かみに似ています。
松は居間では素足で過ごしたいという方にはお奨めです。
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通り土間ならぬ通りクローゼット、向こうに見えるのは南の寝室のサッシです。
南北の居室が連続して使われるかもしれない将来を見越して、寝室のクローゼットの南北の両側に
全開放できる扉を取り付けてあります。
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